ほうじょうづものがたり
放生津物語

冒頭文

一 越中の放生津(ほうじょうつ)の町中に在る松や榎の飛び飛びに生えた草原は、町の小供の遊び場所であった。その草原の中央(なかほど)の枝の禿(ち)びた榎の古木のしたに、お諏訪様と呼ばれている蟇の蹲まったような小さな祠があったが、それは枌葺(そぎふき)の屋根も朽ちて、木連格子の木目も瓦かなんぞのように黒ずんでいた。 初夏の風のないむせむせする日の夕方のことであった。その草原から放生湖の

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 日本の怪談(二)
  • 河出文庫、河出書房新社
  • 1986(昭和61)年12月4日