はやみじょじゅくについてのざつだん
速水女塾に就ての雑談

冒頭文

去年の一月、久しぶりで文学座の公演をみていろいろ感慨にふけつた。自分も創立者の一人であるこの劇団の成長はまづよろこぶべきものとして、さて、十年の月日は私個人をまつたく芝居から引きはなしてしまつたことに気づき、これでいゝのだらうかと考へた。いゝもわるいもない。さうならざるを得ない事情が私にはあり、芝居の方からいへば、私一人がどうならうと別にかまわぬわけである。しかし、すくなくとも、文学座が存在し、そ

文字遣い

新字旧仮名

初出

「文学座昭和24年8月講演・速水女塾 パンフレット」、1949(昭和24)年7月30日

底本

  • 岸田國士全集27
  • 岩波書店
  • 1991(平成3)年12月9日