Sふじんへのてがみ
S夫人への手紙

冒頭文

一 これから毎月一回あなたに手紙を書こうと思いたちました。今度の戦争で愛する夫君を失われ、また小さい二人のお子さんたちの将来について思いなやんでいられるあなたから、いろ〳〵なご相談を受けた時、私がまず感じたことは、国籍こそ日本にあつても、やはりヨーロッパ人の血を享けた女性としてのあなたが、果して、これからさき日本に止つて、われ〳〵と運命を共にすることがおできになるか、ということでした。

文字遣い

新字新仮名

初出

「時事新報」1948(昭和23)年4月1、2、3日、5月3、4、5日、6月18、19、20日、7月12、13、14日

底本

  • 岸田國士全集27
  • 岩波書店
  • 1991(平成3)年12月9日