ぼうおん
忘恩

冒頭文

土佐の侍で大塚と云う者があった。格はお馬廻り位であったらしいがたしかなことは判らない。その大塚は至って殺生好きで、狩猟期になると何時も銃を肩にして出かけて往った。 某日(あるひ)それは晴れた秋の午後であった。雑木の紅葉した山裾を廻って唯(と)ある谷へ往った。薩摩藷などを植えた切畑が谷の入口に見えていた。大塚はその山畑の間の小径を通って、色づいた雑木に夕陽の燃えついたように見える谷の窪地の

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 日本の怪談(二)
  • 河出文庫、河出書房新社
  • 1986(昭和61)年12月4日