にほんじんとは? ――あてなのないてがみ――
日本人とは? ――宛名のない手紙――

冒頭文

「大事なこと」とは? 三年間の蟄居生活が私に教へたことは、「なにもしない」といふことの気安さと淋しさである。そして、この気安さと淋しさとは二つのものでなく、ひとつのものであり、それは表と裏、色と艶、光と影のやうな関係でつねに私の心を占めてゐた。もちろん、たゞこれだけの説明では誰にでもすぐにわかつてもらへさうにもない。「なにかをする」といふことにつきもののある精神の状態をひと口に云ひあらは

文字遣い

新字旧仮名

初出

「玄想 第一巻第一~八号」1947(昭和22)年3月1日~12月1日、「玄想 第二巻第一~二号」1948(昭和23)年1月1日~2月1日

底本

  • 岸田國士全集27
  • 岩波書店
  • 1991(平成3)年12月9日