まちのたんてい
街の探偵

冒頭文

キップの装置 『さっきから気をつけていると、コトンコトンと、微かなリズミカルな音がしているね』 と、彼は指を天井の方に立てて云うのであった。 『ああ、僕にも聞えるよ。鼠が居るのじゃないか』 と、僕はこたえた。 『ねずみ? 鼠が音楽家でもあればねえ』 と、彼はニヤリと笑って、 『——あれは天井裏に、瓦斯(ガス)を発生する装置が置いてあるんだよ』 『え、瓦斯を発

文字遣い

新字新仮名

初出

「シュピオ」1938(昭和13)年4月号

底本

  • 「シュピオ」傑作選 幻の探偵雑誌3
  • 光文社文庫、光文社
  • 2000(平成12)年5月20日