とおのへ
遠野へ

冒頭文

一 「いま、これから東の方に向って、この花巻を発つ。目的地の遠野に着くには、今夜、夜が少し更けてからだそうだ。」——この頃は、もう少しずつ雪が解けはじめたので、途中が非常な悪路だと聞いた。私は今日の道の困難なことを想像しながら、右の文句をはがきに書いた。私はこんどその遠野に帰っている友人に会うために、東京を出て来たのである。 ところへ、宿の女がはいって来て、馬車がくる頃だから用意をしろとい

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 遠野へ
  • 葉舟会
  • 1987(昭和62)年4月25日