『なんぽうえふできこう』のじょ
『南方絵筆紀行』の序

冒頭文

明石哲三君は鋭い感覚の画家であり、「生きもの」に興味をもつ自然科学者であり、しかも、最も人間の原始的なすがたを愛する詩人である。 彼はその性情と肉体の特殊な偏向によるのであらうか、特にいはゆる「南方」の土と空とに惹かれ、屡々飄然と一嚢を肩にして海を渡り、赤道の陽を浴びてひとり歓喜の叫びをあげた。 彷浪の芸術家と呼ぶにはあまりに健康な彼の生活から、求め得るものは奇怪な幻想ではなくして、初々し

文字遣い

新字旧仮名

初出

「南方絵筆紀行」鶴書房、1942(昭和17)年12月25日

底本

  • 岸田國士全集26
  • 岩波書店
  • 1991(平成3)年10月8日