とこや
床屋

冒頭文

本郷区菊坂町         ※九時過ぎたので、床屋の弟子の微(かす)かな疲れと睡気(ねむけ)とがふっと青白く鏡にかゝり、室(へや)は何だかがらんとしてゐる。「俺(おれ)は小さい時分何でも馬のバリカンで刈られたことがあるな。」「えゝ、ございませう。あのバリカンは今でも中国の方ではみな使って居(を)ります。」「床屋で?」「さうです。」「それははじめて聞いたな。」「大阪でも前は矢張りあれを使ひました。

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 新修宮沢賢治全集 第十四巻
  • 筑摩書房
  • 1980(昭和55)年5月15日