はなやさい
花椰菜

冒頭文

うすい鼠(ねずみ)がかった光がそこらいちめんほのかにこめてゐた。 そこはカムチャッカの横の方の地図で見ると山脈の褐色(かっしょく)のケバが明るくつらなってゐるあたりらしかったが実際はそんな山も見えず却(かへ)ってでこぼこの野原のやうに思はれた。 とにかく私は粗末な白木の小屋の入口に座ってゐた。 その小屋といふのも南の方は明けっぱなしで壁もなく窓もなくたゞ二尺ばかりの腰

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 新修宮沢賢治全集 第十四巻
  • 筑摩書房
  • 1980(昭和55)年5月15日