やなぎさわ
柳沢

冒頭文

林は夜の空気の底のすさまじい藻(も)の群落だ。みんなだまって急いでゐる。早く通り抜けようとしてゐる。 俄(にはか)に空がはっきり開け星がいっぱい耀(きら)めき出した。たゞその空のところどころ中風にでもかかったらしく変に淀(よど)んで暗いのは幾片か雲が浮んでゐるのにちがひない。 その静かな微光の下から烈(はげ)しく犬が啼(な)き出した。 けれども家の前を通るときは犬は裏

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 新修宮沢賢治全集 第十四巻
  • 筑摩書房
  • 1980(昭和55)年5月15日