いっついのびか
一対の美果

冒頭文

一 近頃読んだいろいろな文章のなかで、私が特にこゝでその読後感を述べたいと思ふのは、それが今の私にとつて可なり重要な問題を含んでをり、それのいづれからも非常に珍しい感動をうけ、しかも、それらが揃ひも揃つて、所謂「非職業作家」の手になつたところの、甚だ示唆に富んでゐる二つの「記録」である。 先づ最初にあげたいのは、女医小川正子さんの手記「小島の春」である。もう大ぶん前のことだが、何気

文字遣い

新字旧仮名

初出

「文学界 第六巻第三号」1939(昭和14)年3月1日

底本

  • 岸田國士全集24
  • 岩波書店
  • 1991(平成3)年3月8日