さいきこうい
細木香以

冒頭文

一 細木香以は津藤(つとう)である。摂津国屋(つのくにや)藤次郎である。わたくしが始めて津藤の名を聞いたのは、香以の事には関していなかった。香以の父竜池(りゅうち)の事に関していた。摂津国屋藤次郎の称(となえ)は二代続いているのである。 わたくしは少年の時、貸本屋の本を耽読(たんどく)した。貸本屋が笈(おい)の如くに積み畳(かさ)ねた本を背負って歩く時代の事である。その本は読本(よ

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 森鴎外全集6
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 1996(平成8)年1月24日