かぶきげきのしょうらい
歌舞伎劇の将来

冒頭文

歌舞伎劇が、今日、我が国劇の主流を形造つてゐることは、如何なる点から見ても不合理であり、不自然である。しかし、その特異なスペクタクル的興味と、アカデミックな文学的平俗さと、世襲俳優の職業的素質とによつて、資本家の寛大な庇護を受け、民衆の伝統的嗜好に投じつつあることは、誰の罪でもないのである。 私は、決して、歌舞伎劇に代るものが、所謂「新劇」であるとは思はない。それは、やはり、新鮮なスペク

文字遣い

新字旧仮名

初出

「悲劇喜劇 第七号」1929(昭和4)年4月1日

底本

  • 岸田國士全集21
  • 岩波書店
  • 1990(平成2)年7月9日