アトリエのいんしょう
アトリエの印象

冒頭文

私は巴里滞在中、二三の画家諸君と識り合ひになり、ちよいちよいアトリエを訪ねるやうなこともあつたが、いつでもその仕事振り、生活振りに多大の興味を惹かれた。 第一に、いかにも楽しさうに仕事をしてゐる。母親が娘に晴着を著せてゐるやうだともいへるし、子供がお土産に貰つた寄木細工を弄んでゐるやうだともいへ、或はまた、酒飲みが晩酌の膳に向つたやうでもあり、善良な夫が細君の独唱を聴いてゐるやうでもある

文字遣い

新字旧仮名

初出

「アルト 第二号」1928(昭和3)年6月1日

底本

  • 岸田國士全集21
  • 岩波書店
  • 1990(平成2)年7月9日