パリでみたイプセンげき
巴里で観たイプセン劇

冒頭文

私は夙に近代劇の研究はイプセンから始めなければならぬと教えられてゐた。然るに私は、日本を離れるまで、二篇の邦訳を手にしただけである。巴里に来て、近所の貸本屋から、プロゾオルといふ人の仏訳を借りて来て、毎日読み耽つた。あれでたしかイプセンの作品は全部読んだ筈である。 これから実際の舞台を観なければならぬ。それには幸ひルュニェ・ボオのメエゾン・ド・ルウヴル(創作の家)がある。スカンヂナヴイヤ

文字遣い

新字旧仮名

初出

「近代劇全集第一巻 月報第十二号」第一書房、1928(昭和3)年5月10日

底本

  • 岸田國士全集21
  • 岩波書店
  • 1990(平成2)年7月9日