こやまゆうしくんの『せとないかいのこどもら』
小山祐士君の『瀬戸内海の子供ら』

冒頭文

小山君の戯曲家としての成長は、その階梯が極めて劃然とし、『翻るリボン』から、『十二月』、それからこの『瀬戸内海の子供ら』に至る最近の三作を通じて、見事な飛躍をなし、遂に、同君の今日の境地に於て、恐らく完璧ともいふべき表現に到達し得たといふことは、芸術修業の道にあるものが、等しく羨望に堪へぬところである。如何なる好条件に恵まれてゐるにもせよ、会社勤めの傍ら、この大作にじつくりと取組んだ同君の意気は、

文字遣い

新字旧仮名

初出

「築地座 第二十八号」1935(昭和10)年4月26日

底本

  • 岸田國士全集22
  • 岩波書店
  • 1990(平成2)年10月8日