いがやませいぞうくんの『そうおん』
伊賀山精三君の『騒音』

冒頭文

伊賀山君の『騒音』を、最初読んで聞かされた時、僕は、いきなり、たうとう伊賀山君も、作家らしい作家になつたといふ気がし、この戯曲のもつ「真実性」が、単なる見せかけのものでないことを信じたのである。 写実主義も、ここまで生活と心理とを追ひつめれば、はじめて、一種の厳粛さを感じさせる。また一方、これだけでは「舞台的」になんとなく物足らぬ点もないではないが、さういふ程度の写実主義が、実際、劇的作

文字遣い

新字旧仮名

初出

「築地座 第二十二号」1934(昭和9)年4月28日

底本

  • 岸田國士全集22
  • 岩波書店
  • 1990(平成2)年10月8日