げんだいにほんのえんげき (コンテンポラリイ・ジャパンしょさい)
現代日本の演劇 (コンテンポラリイ・ジャパン所載)

冒頭文

一 封建的、鎖国的な旧日本の文化は、所謂「能」と「歌舞伎」とを今日に残した。この二つの珍奇な演劇種目(ジャンル)は、それぞれ長い伝統の上に築かれた特殊の美を誇つてをり、一つは、貴族的、武士的な趣味を、一つは民衆的、市井的な趣味を代表し、現在に於ても、熱心な支持者をもつてゐる。 凡そ世界の舞台芸術を通じて、人間の創造的努力が、これほど犠牲的に、ある完成のために捧げられ、「常識美」の極

文字遣い

新字旧仮名

初出

「劇作 第五巻第十号」1936(昭和11)年10月1日

底本

  • 岸田國士全集23
  • 岩波書店
  • 1990(平成2)年12月7日