おんなきゅうさい
女九歳

冒頭文

Y子はK病院で扁桃腺の手術をすることになつた。 Y子は九歳で、春夏秋冬、風邪をひいた。 Y子は母親と、K子叔母ちやまと、女中とに連れられて家を出た。 Y子はその日、平生よりもはしやいでゐた。そして、時々、溜息を吐いた。 裸にされ、手術室にはひると、そばに母親も、K子叔母ちやまも、女中もゐなかつた。 Y子は、一寸泣きたさうな顔をしたが、やがて、夢中で

文字遣い

新字旧仮名

初出

「手帖 第一巻第九号」1927(昭和2)年11月1日

底本

  • 岸田國士全集20
  • 岩波書店
  • 1990(平成2)年3月8日