はやく
端役

冒頭文

端役をすら、一生懸命に演ずる俳優は頼母しい俳優だ。それは、端役しか勤まらない俳優であつてもいゝ。彼は主役に選ばれる幸運に繞り合はずに、その生涯を終ることがあつても、彼は、その生涯を通じて、一座の「必要な人物」であつたことに何の変りもない。端役しか勤めないといふ理由で、その俳優を軽蔑するものがあつたらそのものこそ、芝居を心得ぬものである。 私たちは、芸術の道に於て、一つの端役を演じることで

文字遣い

新字旧仮名

初出

「文芸時代 第四巻第四号」1927(昭和2)年4月1日

底本

  • 岸田國士全集20
  • 岩波書店
  • 1990(平成2)年3月8日