しんげきかいのぶんや
新劇界の分野

冒頭文

昨今の戯曲界を見渡すと、月々発表される戯曲の数こそ多いが、そして、その数の多いことが何となく華々しい外観を呈してゐるが、質の上からいへば、注目に値するものが寔に少い。実際舞台にかけて見て、相当見応へがあると思はれるやうなものは、極く稀れである。この点、私自身も、自ら顧みて忸怩たるものがある次第であるが、かくの如き状態は、度々繰り返して云ふことであるが、わが国の劇作家が、常に一つの「完成された舞台」

文字遣い

新字旧仮名

初出

「演劇新潮 第二巻第三号」1927(昭和2)年3月1日

底本

  • 岸田國士全集20
  • 岩波書店
  • 1990(平成2)年3月8日