一、午前八時五分 農場の耕耘部(かううんぶ)の農夫室は、雪からの反射で白びかりがいっぱいでした。 まん中の大きな釜(かま)からは湯気が盛んにたち、農夫たちはもう食事もすんで、脚絆(きゃはん)を巻いたり藁沓(わらぐつ)をはいたり、はたらきに出る支度をしてゐました。 俄(には)かに戸があいて、赤い毛布(けっと)でこさへたシャツを着た若い血色のいゝ男がはひって来ました。