ならのきだいがくしののじゅく
楢ノ木大学士の野宿

冒頭文

楢(なら)ノ木大学士は宝石学の専門だ。 ある晩大学士の小さな家(うち)へ、 「貝の火兄弟(けいてい)商会」の、 赤鼻の支配人がやって来た。 「先生、ごく上等の蛋白石(たんぱくせき)の注文があるのですがどうでせう、お探しをねがへませんでせうか。もっともごくごく上等のやつをほしいのです。何せ相手がグリーンランドの途方もない成金ですから、ありふれたものぢゃなかなか承知しないんです。」 大学士は

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 新修宮沢賢治全集 第十巻
  • 筑摩書房
  • 1979(昭和54)年9月15日