まくあい
幕間

冒頭文

妙なことを云ふやうですが、僕は、芝居を観に行くたんびに、「劇場の空気」といひますか、あの幕間の数分間が醸しだす見物席乃至廊下の雰囲気を、そんなに有難いものだとは思はないのです。出来ることなら、たゞ一人、親しい連れでもあれば、その連れと二人でもいゝ、どこか、人も見えず、人にも見られないやうな一隅を見つけ出して、次の幕があくまで、今見たばかりの舞台を、もう一度静かに、頭の中で繰り返して見たい、さういふ

文字遣い

新字旧仮名

初出

「女性 第八巻第二号」1925(大正14)年8月1日

底本

  • 岸田國士全集20
  • 岩波書店
  • 1990(平成2)年3月8日