カルナックのなつのゆう
カルナツクの夏の夕

冒頭文

画家のO君から手紙が来て、静かな処だ、やつて来て見ろといふことでした。 細君からも何か書き添へてあつたやうに思ひます。 巴里から十何時間、ブルタアニュの西海岸で、その昔ケリオンといふ不思議な小人が住んでゐた処です。 宿はさゝやかなホテル・パンシヨン、国道を距てゝ美しい牧場などがありました。 海へも遠くはない。 聖堂の古風な鐘楼、広場の物語めいた泉水

文字遣い

新字旧仮名

初出

「婦人公論 第十年第七号」1925(大正14)年7月1日

底本

  • 岸田國士全集20
  • 岩波書店
  • 1990(平成2)年3月8日