よこやりいっぽん ――がいこくぶんがくの『あじ』――
横槍一本 ――外国文学の『味』――

冒頭文

この頃、二三の人が新聞や雑誌でかういふ議論をしてゐる。 「外国文学を味はふ場合、その国の人が味はひ得る味を、外国人たるわれ〳〵が同じやうに味はふことは不可能である」 至極尤もな説である。 多くの人々と同様、僕も、此の問題については再三考へたことがある。 然し、問題をもう一歩進めて、それならば一つの作品を、甲の人間が味はひ得る如く、乙の人間が味はひ得るか。

文字遣い

新字旧仮名

初出

「時事新報」1925(大正14)年3月3、4、5日

底本

  • 岸田國士全集19
  • 岩波書店
  • 1989(平成元)年12月8日