「ふかかい」のみりょく
「不可解」の魅力

冒頭文

解らない、然し、何だか、かうふわつと来るものがある。少しぢれつたい、が、悪い気持ちぢやない。 芸術の鑑賞が、常にこれでは少々心細いが、僕はたしかに、今日まで、かういふものにぶつかつたことがある。 処が、さういふものでも、処々はつきり解る部分がないではない。そして、此の解る部分の魅力が、解らない部分の魅力をかなり左右することにも気がついてゐる。 僕は、此の解らない部分の

文字遣い

新字旧仮名

初出

「時事新報」1924(大正13)年12月11日

底本

  • 岸田國士全集19
  • 岩波書店
  • 1989(平成元)年12月8日