みずのせんこさんのおもいで
水野仙子さんの思ひ出

冒頭文

水野仙子さんに就いて筆を執るのは實に廿五年ぶりくらゐな事であらうか。今紙を前にひろげて一種の感慨なきを得ない。私は曾て大正七、八年の頃に、三宅やす子さんの發行して居られたウーマンカレントといふ小さい雜誌に、自分と仙子さんとの交渉を、可成り正直に心からの聲を出して書いた事があつた。それ以來此度久しぶりで仙子さんに就いて書くのである。それは我社の企てであつた女流作家研究のうちで、明治時代の女流作家とし

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「明日香」第八巻第三号、1943(昭和18)年3月

底本

  • 明治文學全集82 明治女流文學集(二)
  • 筑摩書房 
  • 1965(昭和40)年12月10日