あるふうふのれきし
ある夫婦の歴史

冒頭文

愛するものよ、おんみもしわれを裏切りてわれこれをゆるさんとおもへど、その力なきとき、おんみその力をわれに与へうるや ——ある時代の悲喜劇から 一 内海達郎は、近頃あまり経験したことのない胸騒ぎを感じた。それは、十数年前にパリで知合つて、わりにちかしく交際をした一人のフランス人、ロベエル・コンシャアルから、思ひがけない手紙を受けとつたことからである。

文字遣い

新字旧仮名

初出

「苦楽 臨時増刊第四号」1949(昭和24)年7月20日

底本

  • 岸田國士全集15
  • 岩波書店
  • 1991(平成3)年7月8日