にじゅうろくや
二十六夜

冒頭文

※ 旧暦の六月二十四日の晩でした。 北上(きたかみ)川の水は黒の寒天よりももっとなめらかにすべり獅子鼻(ししはな)は微(かす)かな星のあかりの底にまっくろに突き出てゐました。 獅子鼻の上の松林は、もちろんもちろん、まっ黒でしたがそれでも林の中に入って行きますと、その脚の長い松の木の高い梢(こずゑ)が、一本一本空の天の川や、星座にすかし出されて見えてゐました。 松

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 新修宮沢賢治全集 第九巻
  • 筑摩書房
  • 1979(昭和54)年7月15日