※ 旧暦の六月二十四日の晩でした。 北上(きたかみ)川の水は黒の寒天よりももっとなめらかにすべり獅子鼻(ししはな)は微(かす)かな星のあかりの底にまっくろに突き出てゐました。 獅子鼻の上の松林は、もちろんもちろん、まっ黒でしたがそれでも林の中に入って行きますと、その脚の長い松の木の高い梢(こずゑ)が、一本一本空の天の川や、星座にすかし出されて見えてゐました。 松