いちょうのみ
いてふの実

冒頭文

そらのてっぺんなんか冷たくて冷たくてまるでカチカチの灼(や)きをかけた鋼(はがね)です。 そして星が一杯です。けれども東の空はもう優しい桔梗(ききゃう)の花びらのやうにあやしい底光りをはじめました。 その明け方の空の下、ひるの鳥でも行(ゆ)かない高い所を鋭い霜のかけらが風に流されてサラサラサラサラ南の方へ飛んで行(ゆ)きました。 実にその微(かす)かな音が丘の上の一本

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 新修宮沢賢治全集 第八巻
  • 筑摩書房
  • 1979(昭和54)年5月15日