十日の月が西の煉瓦塀(れんぐわべい)にかくれるまで、もう一時間しかありませんでした。 その青じろい月の明りを浴びて、獅子(しし)は檻(をり)のなかをのそのそあるいて居(を)りましたが、ほかのけだものどもは、頭をまげて前あしにのせたり、横にごろっとねころんだりしづかに睡(ねむ)ってゐました。夜中まで檻の中をうろうろうろうろしてゐた狐(きつね)さへ、をかしな顔をしてねむってゐるやうでした。