虔十(けんじふ)はいつも繩(なは)の帯をしめてわらって杜(もり)の中や畑の間をゆっくりあるいてゐるのでした。 雨の中の青い藪(やぶ)を見てはよろこんで目をパチパチさせ青ぞらをどこまでも翔(か)けて行く鷹(たか)を見付けてははねあがって手をたゝいてみんなに知らせました。 けれどもあんまり子供らが虔十をばかにして笑ふものですから虔十はだんだん笑はないふりをするやうになりました。