くるま

冒頭文

ハーシュは籠(かご)を頭に載っけて午前中町かどに立ってゐましたがどう云(い)ふわけか一つも仕事がありませんでした。呆(あき)れて籠をおろして腰をかけ弁当をたべはじめましたら一人の赤髯(あかひげ)の男がせはしさうにやって来ました。 「おい、大急ぎだ。兵営の普請に足りなくなったからテレピン油(ゆ)を工場から買って来て呉(く)れ。そら、あすこにある車をひいてね、四罐(くわん)だけ、この名刺を持って

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 新修宮沢賢治全集 第十一巻
  • 筑摩書房
  • 1979(昭和54)年11月15日