ぐうぜんのうんだだじゃれ
偶然の産んだ駄洒落

冒頭文

駄洒落(だじゃれ)を聞いてしらぬ顔をしたり眉をひそめたりする人間の内面生活は案外に空虚なものである。軽い笑(わらい)は真面目な陰鬱(いんうつ)な日常生活に朗(ほがら)かな影を投げる。ある日、私がパリで散髪をしていると理髪師が私に向ってデ・ジャポネー(日本人)は騎兵は要らぬそうですねといった。何のことかと聞くとデジャ(既に)ポネー(小馬)だからといった。人を馬鹿にしているこの駄洒落は異郷の旅愁をかえ

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 九鬼周造随筆集
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 1991(平成3)年9月17日