ぎおんのしだれざくら
祇園の枝垂桜

冒頭文

私は樹木が好きであるから旅に出たときはその土地土地の名木は見落さないようにしている。日本ではもとより、西洋にいた頃もそうであった。しかしいまだかつて京都祇園(ぎおん)の名桜「枝垂桜(しだれざくら)」にも増して美しいものを見た覚えはない。数年来は春になれば必ず見ているが、見れば見るほど限りもなく美しい。 位置や背景も深くあずかっている。蒼(あお)く霞(かす)んだ春の空と緑のしたたるような東

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 九鬼周造随筆集
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 1991(平成3)年9月17日