しまい
姉妹

冒頭文

山には別しても秋の來るのが早い。もう八月の暮がたからは、夏の名殘の露草に混つて薄だとか女郎花(をみなへし)だとかいふ草花が白々した露の中に匂ひそめた。大氣は澄んで、蒼い空を限つて立ち並んで居る峯々の頂上などまでどつしりと重みついて來たやうに見ゆる。漸々(だん〳〵)紅らみそめた木の實を搜(あさ)るいろ〳〵の鳥の聲は一朝ごとに冴えまさつた。 お盆だ〳〵と騷がれて、この山脈の所々に散在して居る

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「新聲」1907(明治40)年12月号

底本

  • 若山牧水全集 第九卷
  • 雄鶏社
  • 1958(昭和33)年12月30日