しずおかじしんひがいけんがくき
静岡地震被害見学記

冒頭文

昭和十年七月十一日午後五時二十五分頃、本州中部地方関東地方から近畿地方東半部へかけてかなりな地震が感ぜられた。静岡の南東久能山(くのうざん)の麓をめぐる二、三の村落や清水市の一部では相当潰家(つぶれや)もあり人死(ひとじに)もあった。しかし破壊的地震としては極めて局部的なものであって、先達(せんだっ)ての台湾地震などとは比較にならないほど小規模なものであった。 新聞では例によって話が大き

文字遣い

新字新仮名

初出

「婦人の友」1935(昭和10年)9月1日

底本

  • 寺田寅彦全集 第七巻
  • 岩波書店
  • 1997(平成9)年6月5日