ざつぶんてきざつぶん
雑文的雑文

冒頭文

映画のことなら何でもよいから見計いで書けという命令であるが、私は天性頭脳朦朧、言語不明瞭、文章曖昧、挙動不審の人物であるからたちまちはたとばかりに当惑してしまう。 しかも命令の主は官営雑誌のごとき威厳を備えた『中央公論』である。断りでもしようものならたちまち懲役何カ月かをくいそうだし、引き受けたら最後八さん熊さんがホテルの大食堂に引き出されたような奇観を呈するに決まつているのである。

文字遣い

新字新仮名

初出

「中央公論」1934(昭和9)年9月号

底本

  • 新装版 伊丹万作全集1
  • 筑摩書房
  • 1961(昭和36)年7月10日