はつゆき
初雪

冒頭文

長いクロワゼットの散歩路が、あおあおとした海に沿うて、ゆるやかな弧を描いている。遥か右のほうに当って、エストゥレルの山塊がながく海のなかに突き出て眼界を遮り、一望千里の眺めはないが、奇々妙々を極めた嶺岑(みね)をいくつとなく擁するその山姿は、いかにも南国へ来たことを思わせる、うつくしい眺めであった。 頭を囘(めぐ)らして右のほうを望むと、サント・マルグリット島とサント・オノラ島が、波のう

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • モオパツサン短篇集 初雪 他九篇
  • 改造文庫、改造社出版
  • 1937(昭和12)年10月15日