やまがたやのせいしゅん
山形屋の青春

冒頭文

一 山形屋の若主人宇部東吉は東京へ商品の買ひ出しに出たきり、もう二週間も帰つて来ない。そのうへ、消息がふつつり絶えたきりになつてゐる。こんなことは今までに例のないことだから、留守居の細君みよ子はもう眼を泣きはらし、父親の紋七はコタツの中でぷりぷり言ひ、近所近辺はその噂でもちきりであつた。 上州三原からバスで鳥居峠を越える県道が、最近の大水で流されたあとへやつとかゝつた吾妻川の仮

文字遣い

新字旧仮名

初出

「オール読物 第七巻第一号」1952(昭和27)年1月1日

底本

  • 岸田國士全集18
  • 岩波書店
  • 1992(平成4)年3月9日