ひかりはかげを
光は影を

冒頭文

彼を待つもの 一 長い戦争をはさんで、まる七年目に、京野等志(きようのひとし)は、変りはてた祖国の土を踏み、漠然と父母兄弟がそのまゝ以前のところに住んでいるなら、という期待だけで、自然に東京へ向つて二昼夜の汽車の旅をつづけて来たのである。彼は途中、ふらふらと大阪で降りた。同行の誰かれが不審がるのを、笑つて理由は言わず、駅からまつすぐに勝手を知つた心斎橋へ地下鉄で出て、焼跡に建ち

文字遣い

新字新仮名

初出

彼を待つもの「キング 第二十六巻第四号」1950(昭和25)年4月1日、はるかなる青春「キング 第二十六巻第五号」1950(昭和25)年5月1日、〔欠題〕「キング 第二十六巻第六号」1950(昭和25)年6月1日、兄の立場「キング 第二十六巻第七号」1950(昭和25)年7月1日、ある少女の役割「キング 第二十六巻第八号」1950(昭和25)年8月1日、父の孤独「キング 第二十六巻第九号」1950(昭和25)年9月1日、愛と死と生の戯れ「キング 第二十六巻第十号」1950(昭和25)年10月1日、運命に逆うもの「キング 第二十六巻第十一号」1950(昭和25)年11月1日、変転の外に「キング 第二十六巻第十二号」1950(昭和25)年12月1日、この日あるがために「キング 第二十七巻第一号」1951(昭和26)年1月1日、二つの未来図「キング 第二十七巻第二号」1951(昭和26)年2月1日、希望の羽ばたき「キング 第二十七巻第三号」1951(昭和26)年3月1日

底本

  • 岸田國士全集18
  • 岩波書店
  • 1992(平成4)年3月9日