ひのとびら
火の扉

冒頭文

冬を待つ山河 一 もう、その年の秋も暮れようとしていた。 その年とは、長い戦いがすみ、来たるべきものが来たり、きびしい祖国の運命を告げ知らされた年である。 信州のI市に近い山村の国民学校で、きようも校長を中心に研究会が開かれ、今後の新しい、教育の問題について、まだなんとなく地につかない討論をしたあとで、四五名の教員がストーブを囲んで雑談を続けていた。

文字遣い

新字新仮名

初出

「時事新報」1944(昭和19)年1月1日~7日、1月9日~2月25日、3月1日~3月5日、3月7日~3月8日、3月11日~3月15日、3月18日~3月21日、3月25日、3月27日~3月29日、4月1日~4月3日、4月7日~4月11日、4月15日~4月19日、4月24日~5月4日、5月6日~5月9日、5月13日~5月17日、5月20日、5月22日~5月24日、5月27日~5月31日、6月3日~6月8日、6月12日~6月17日、6月19日~6月22日、6月24日~6月26日、6月28日

底本

  • 岸田國士全集16
  • 岩波書店
  • 1991(平成3)年9月9日