じんたいかいぼうをみるのき
人体解剖を看るの記

冒頭文

僕は最近、はからずも屍体解剖を看るの機会を持った。僕の友人に、慶応の生理学の先生である林髞博士というのがあるが、この林博士は前から僕に屍体解剖を見物するように薦めてくれたのであった。僕はもちろん見たいには見たかったのだ。しかし困ったことに、いくら見たくとも、それは芝居や犬の喧嘩を見るように簡単にはゆかないのである。つまり胆力という問題、換言すれば、脳貧血になるかならぬかという問題が存在するため、手

文字遣い

新字新仮名

初出

「シュピオ」1937(昭和12)年1月号

底本

  • 海野十三全集 別巻1 評論・ノンフィクション
  • 三一書房
  • 1991(平成3)年10月15日