あるじさつしゃのしゅき
ある自殺者の手記

冒頭文

新聞をひろげてみて次のような三面記事が出ていない日はほとんどあるまい。 水曜日から木曜日にかけての深更(しんこう)、某街四十番地所在の家屋に住む者は連続的に二発放たれた銃声に夢を破られた。銃声の聞えたのは何某氏の部屋だった。ドアを開けてみると借家人の某氏は、われと我が生命(いのち)を断った拳銃を握ったまま全身あけに染って打倒れていた。 某氏(五七)はかなり楽な生活(くら

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • モオパツサン短篇集 色ざんげ 他十篇
  • 改造文庫、改造社出版
  • 1937(昭和12)年5月20日