せいけんじのしょうせい
清見寺の鐘声

冒頭文

夜半(よは)のねざめに鐘の音ひゞきぬ。おもへばわれは清見寺(せいけんじ)のふもとにさすらへる身ぞ。ゆかしの鐘の音(ね)や。 この鐘きかむとて、われ六(む)とせの春秋(はるあき)をあだにくらしき。うれたくもたのしき、今のわが身かな。いざやおもひのまゝに聽きあかむ。 秋深うして萬山(ばんざん)きばみ落(お)つ。枕をそばだつれば野に悲しき聲す。あはれ鐘の音、わづらひの胸にもの思へとや

文字遣い

旧字旧仮名

初出

底本

  • 現代日本文學全集 第十三篇
  • 改造社
  • 1928(昭和3)年12月1日