夜半(よは)のねざめに鐘の音ひゞきぬ。おもへばわれは清見寺(せいけんじ)のふもとにさすらへる身ぞ。ゆかしの鐘の音(ね)や。 この鐘きかむとて、われ六(む)とせの春秋(はるあき)をあだにくらしき。うれたくもたのしき、今のわが身かな。いざやおもひのまゝに聽きあかむ。 秋深うして萬山(ばんざん)きばみ落(お)つ。枕をそばだつれば野に悲しき聲す。あはれ鐘の音、わづらひの胸にもの思へとや、この世なら