そうめんしん
双面神

冒頭文

祝賀会を繞つて 一 無理やりに父の隣に坐らされた千種(ちぐさ)は、広い食堂の一隅に設けられた婦人連の席へ、僅かに晴れがましい微笑を投げてゐた。 芝公園の深い木立(こだち)の中の、古風な、しかし落ちついた西洋料理店である。 羊頭塾(ようとうじゆく)三十周年記念祝賀会御席といふ貼紙が、まだ眼に残つてゐる。二百に近い顔が並んでゐるが、三分の二以上は、まるつきり見覚えのない顔である。それが何れ

文字遣い

新字旧仮名

初出

「東京日日新聞」「大阪毎日新聞」1936(昭和11)年5月19日〜10月5日

底本

  • 岸田國士全集11
  • 岩波書店
  • 1990(平成2)年8月9日