あるおとこのし
ある男の死

冒頭文

A! 女学校では、当時有名な話でありました。それは 『二時間目事件。』 といふのでした。 新学期がはじまつてから二ヶ月程後のある日、朝から二時間目の歴史の時間に起つたこと。と書きたてるほど大げさなことでもないのに、それをそれほど有名にしたのは、まつたく、その男の——つまり、その歴史の時間での先生である溝口文学士の性格によるのでした。 やんちや盛りの、何かことあれかしと、

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 日本の名随筆69 男
  • 作品社
  • 1988(昭和63)年7月25日