サボテンとはなびのかんしょう
仙人掌と花火の鑑賞

冒頭文

わたくしはいつもの瞑想をはじめる。——否、瞑想ではない、幻像の奇怪なる饗宴だ。雜然たる印象の凝集と發散との間に感ずる夢の一類だ。さうしてゐるうちに突然とわたくしの腦裡に、仙人掌と花火といふ記號的な概念が浮んでくる。その概念が内容を摸索する。人間の日常生活には、さして交渉を保たないこの二つのものが、漸次に一つの情調の中に人工的な色と形のアレンジメントを創造する。 仙人掌の聯想の奧から、まづ

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「屋上庭園」1910(明治43)年2月

底本

  • 日本現代文學全集 22 土井晩翠・薄田泣菫・蒲原有明・伊良子清白・横瀬夜雨 集
  • 講談社
  • 1968(昭和43)年5月10日